第5章 近付く距離(●)
リサが家に入り、リヴァイは鍵を閉めるのを確認する。
玄関のすぐ横の小窓からリサは顔を出し、
『お、や、す、み、な、さ、い』
窓が閉まっていて声は聞こえないがリヴァイは口の動きで理解した。
リヴァイが頷くと、リサは笑顔で手を振りゆっくりとカーテンを戻す。
『さてと…。』
三白眼を鋭くすると腰からナイフを取り出すと刃先を下に向ける。
『俺が気付いてないと思ってるのか。』
後ろを振り向き反対側の荷馬車の方を睨むとゆっくり近付く。
『俺に用か…?それともリサか…?』
リヴァイに反応した荷馬車は急ぐようにその場を去る。
誰が乗っていたか確認出来ていない。
『立体機動装置で追うか。。いや、深追いは危険だな。くそっ』
荷馬車の去りゆく音を聞きながら踵を返す。
リサの家を見るといつの間にか明かりは消えている。
何も気付かれてないことに安心しつつ、リヴァイはアジトの方へ再び飛び立った。
『さっきの荷馬車が気になるな。今日の件もあるし、これ以上リサを巻き込むわけにはいかない。リサは…俺が守る』
一方背負っていた背中はもうリサの温かさがなくなり冷えている。
先程の心が浮かぶような気持ちを思い出す。
心配もありつつ、またリサの笑顔が見られると思うとまた気持ちが上がる。
『くそっ…いつもの俺じゃないな』
何といえばいいのか分からぬ感情に困惑しつつも、悪くないとリヴァイは呟き夜の地下街を駆け抜けた。
『今日は色々あったなー。おばあちゃんがいなくなってから初めて笑ったような』
例のハンカチをギュッと握りながらベッドに丸まる。
『最後の方、ずっとリヴァイさんに抱きついて気がする…』
一緒に立体機動装置で飛んでいた時のことを思い出し顔が熱くなる。最初遠慮して肩に手を置いていた謙虚さはどこへやら。
『リヴァイさん、もうアジトに着いてるかな。イザベルとファーランさんはリヴァイさんと住んでるのよね。ちょっと…いいなぁ』
仲間だし当たり前よね!と自分に言い聞かせて、バサッと布団を被る。
『もう会いたくなるこの気持ちって……。』
自問自答しようとするとリサはそのまま眠ってしまった。