第32章 君の為の約束
『な・・・に・・・これ・・・』
新聞を掴む手に力が加わり、新聞はくしゃっとシワを作る。見出しの文字の下には手書きの絵でオレグが悦びを表している場面までも大きく載っていた。
『あいつ体調悪かったのか・・・。もう一人のやつにもきっちり説明しておくべきだったな・・・。すまん、リヴァイ』
『チッ・・・仕方ねぇ・・・リサ、こっちに来い』
リヴァイは手を差し出すが、新聞の記事を細かく読んでいるリサは文を目で追っていてリヴァイの手に気づかない。
何がどうなってるのか分からないリサは1列も飛ばさないように顔を近づける。
───地下で商売をしているところを窃盗団による襲来。
───違法ドラッグの密売を店でされていた。
───駆け付けた憲兵団への妨害。
───愛する者を誘拐された。
───冤罪になったが、名誉毀損。
『なんて無茶苦茶な記事・・・。信じられない!誘拐?!』
全てオレグにとって優位な記事になっている。無駄だと分かっていても新聞に載っているオレグをリサは睨みつけた。
『リサ、気持ちは分かるがそんな顔をするな』
リサの元にやってきたリヴァイはギュッと抱きしめる。リヴァイの温かい香りで冷静さを取り戻すが、怒りが収まりそうにないリサはリヴァイを見上げた。
『ヤツを豚小屋に突っ込んでやろうと思ったが、何かしらの圧力がかかったんだろう。俺たちの力不足だ・・・悪いなリサ』
リサは泣きそうな顔で首を横に何度も振る。
『いいんです!あの人が牢屋に入っても入らなくても。でもっ・・・でもっ・・・リヴァイさん達が悪人のような書き方をされて・・・悔しいっ!!!』
大きな瞳をぎゅっと瞑ると、一筋の涙が流れた。
リヴァイはリサの頭を自身に寄せると優しく撫でる。
きっとリヴァイ達の方が何倍も悔しいはずなのに、リサが傷つかないように・・・笑顔でいて欲しいからと、ここ数日間の記事を知っていたにも関わらずリヴァイ達は何事もなく接していた。
きっと新聞配達の人もリサが目に付きにくいように配慮して配達していて、この手の話もリサが眠った後にリヴァイはファーランとしていた。
全てが繋がったようで、リサは涙が止まらなかった。