第31章 新聞と林檎
『リサ、もしかして林檎1個だけ傷んでた?綺麗なもの選んだつもりだったのにごめんな』
『あ、ファーランさんっ!そうじゃないんです』
シャリっといい音を立てて各々林檎をかじる。
『じゃぁ、何だ?』
『リヴァイさん・・・すみません、林檎を1個あげちゃいました。体調を崩したお仲間さんがいたので、何かしてあげたくって・・・』
『別に怒ってるわけじゃねぇ。食事や食材は今はリサに任せているわけだ・・・好きなようにすればいい』
少ししょんぼりしているリサの頭を撫でるとリサは笑顔ではいっ!と答えた。
その様子にファーランもイザベルも笑顔で頷く。
窃盗団の一員でもないリサの存在を初めは不満を洩らす者もいたが、甲斐甲斐しく周りの世話や社交的な性格もあって割と直ぐに他の仲間と打ち解けていたのはリヴァイも安心していた。
ただ、打ち解けすぎていないかだけは常に気にはしている。
『で?誰が調子が悪いんだ?場合によっては医者んとこに連れて行かねぇとな』
さり気なくリヴァイは探りを入れる。
目の前でファーランが笑っている気がするが、今は相手にしない。
『すみません。名前はわからないんですけど・・・、教えてくれたのが朝早くにリヴァイさん達を訪ねてきてくれた男の子です。背丈は私と同じぐらいでした』
『『『────!!!』』』
リヴァイ、ファーラン、イザベルは林檎を食べる手が止まる。
『そうそう!その子がその体調悪い人の代わりに新聞を持ってきてくれてんですよ。もぅ、リヴァイさん新聞読んでたんじゃないですかぁ』
朝方届けられた新聞を何処に置いたかなーとキッチンに入り、隅にひっそりと置いてあるのを見つける。
『リサ!!新聞広げるんじゃねぇ!!』
『はい??』
シュルっと紐が解けてしまい、丸められていた新聞はひらりと広げられる。
自然に目線は下げられ、新聞の大きな見出しにリサは言葉に詰まる。
〘 オレグ・ロヴォフ伯爵冤罪!地下街の窃盗団による陰謀か?! 〙