第4章 無自覚の鳥
無神経なことを言ってしまったと、内心冷や汗をかく。
膝の上で両手をぐっと握り、ちらっとリヴァイの方へ見る。
『俺達はいわゆるゴロツキってやつだ。必要な物を盗み、時には人を殺す。立体機動装置もそういった経緯から手に入れた。そして彼奴らは信じるに足る仲間だ』
なんとなくは分かっていた。
狭い地下街にいると、そういう話も聞く。
いや、そうでもしないと生きていけない場所なのはリサが一番よく理解している。
毎日のように怒号が飛び交い、幼い子供も飢え死ぬ。
若い女は娼婦として売られていくことも多い。
『リサ、俺や彼奴等が怖くなったか?』
『いえ、そんな事ないです。私だって過ごしてる条件が違えばもしかしたら同じことをしてるかもしれません』
『…お前はそんなこと出来ねぇ。地下街にいてもお前は普通の女だ』
曲げていた背中を伸ばし髪を掻き上げ、フンと鼻を鳴らす。
『で、出来ますよ!!』
何の対抗心からか勢いよく立ち上がる。
『ほぅ。ならこのナイフを持ってみろ』
懐からナイフを出したリヴァイはスッとテーブルの上に滑らせリサの目の前でナイフは持ちやすい位置に停止する。
鋭利な面にリサの強張った表情が映し出される。
唇に力を入れると、そっと手に触れ持ち上げる。
見た目の大きさに反して重く思わず両手で握りしめた。
リヴァイは何も言わず腕を組んだままリサを見る。
規則的に聞こえる時計の針の音だけが響いていた。
『あー!もう!兄貴、リサに何やらしてんだよ!
リサ~、俺たちは悪い奴らからしか奪わないし無意味に殺らないからな!』
バーン!とドアを勢いよく開けてきたイザベルに驚き思わずナイフを落としそうになる。
『あ~もう、イザベルのやつ。。』
わしわしと頭を掻きながら気まずそうに入るファーランはウインク1つして、リサからナイフをそっと取り上げる。
『お前ら、ずっと聞いてたな』
リヴァイの声が低くなる。
『よく言うよ!気付いてたくせに』
まぁな、とリヴァイはファーランからナイフを受け取ると元の場所に仕舞った。
リサはそのまま俯いて立ちすくむ。