第24章 夜明け
『そ…うだった…んですか』
リサは何となくは気付いていた。
娼婦として何も持っていなかったリサが、オーナーなのに自分専属と言ったり、呼び出しの無理強いをすることはなかった。
娼婦とはいえ、待遇のいい扱いを受けていたというのは初めてオレグと会ってから数日後に分かることになる。
数ヶ月前―――
オレグがオーナーをしている娼館にてリサは2回目の仕事に来ていた。
気乗りはしなかったが、おばあちゃんの薬の為と腹をくくって着慣れないドレスを来て娼婦用の門をくぐる。
『……おはようございます。リサ出勤してまいりました』
メイク室のような小さめの部屋で他の娼婦達が身だしなみを整えている。地下街だが高級路線のオレグの店は清潔感があり、元ローザの店に勤めていた者もいるなど綺麗な女性が集まっていた。
『あ……頬大丈夫ですか?』
『何あんた…?触らないでよっ!!』
『ご、ごめんなさい…』
メイク室の片隅に髪の毛がボサボサでメイクも崩れた女の子達がかたまっている。
頬に青アザの女の子がいたからリサは声をかけるが捲し立てるようにリサの手を払い除けた。
『おい、リサは来ているか?』
『あっ…はい!リサはここにっ!』
オレグの指示で来た男がリサを呼びに化粧室の扉を開く。
名前を呼ばれたリサは勢いよく立ち上がり手を挙げた。
『オレグ様がお待ちだ。すぐに部屋に来るようにと』
『わかりました。…今すぐ行きます』
ドレスの肩紐を真っ直ぐに直し、ぺこっとさっきの女の子達にお辞儀をすると歩き出す。
『オレグ様のお気に入りだからって調子乗らないで。入って間もないくせに…娼婦の辛さなんて…あなたに分からない…』
頬に青アザが出来た女の子は涙を浮かべてリサを睨みつける。
なんて声を掛けたらいいのか分からず、リサは再度お辞儀をして足早に化粧室から出た。