第2章 始まりの呼吸
「どうしたのさ?ぽかんとして」
「あの…鬼って…さっき自分を鬼だと言ってましたよね…」
「事実さ。もう千年も前に鬼に〝された〟んだ。君の妹と同じだね」
「…本当に…そんな昔から…」
さっき人間だったのは千年も昔だと言っていたし…ということは千歳以上ということになるのか…?
いやでも女性に年齢の話は…
つい先ほどまで、妹を殺されかけていたというのに…次から次へと疑念が尽きない…
「そうだ、禰豆子…は無事で…あれ、なんか手紙が…!」
「義勇さんからじゃない?私彼に呼ばれてここに来たんだ。なんて書いてあるの?」
「…狭霧山に住む鱗滝左近次という方をを訪ねるよう書いてあります」
「鱗滝さんのとこか…うーん…一晩じゃ行けないな」
首を傾げながらそう言った後、遠くを見るように手を額に添えて、空を眺め始める依千さんに聞いてみる
「一晩で行かないと何か問題があるんですか?」
「私はまぁ…最終手段があるから置いといて…君の妹も鬼だろう?陽の光を浴びると死んじゃうのさ」
「そそ、そうなんですか!?禰豆子が!?」
「とりあえず、ちょっと歩くけど洞窟がある山があるから、今日はそこまで進もう。道中鬼が出たら私に任せてくれ」
軽く自分の胸を叩きながら、微笑む依千さんの顔を見ると何故か安心感が増す
…そうしているうちに、禰豆子が目を覚ました
さっきとは違って随分と大人しくてぼーっとしているけど…手を差し伸べたら握り返してくれた
「じゃあ行こっか。こっちだよ」
月の光に照らされて川の水面のように光を反射する銀髪の髪が風に靡くのを目で追っていると、そう言われて手を引かれる
三人で手を繋いで…今まで通ったことのない道を通る
薄暗い道中でやけに映える銀髪の髪と、珍しい花の香りが妙に記憶に焼きついていた