第13章 調査の呼吸
蝶屋敷に帰ってからは、一瞬で屋敷の者が騒然としはじめる
つい数日前、非番の時に訪れた依千さんは、ここの子達が働き者だからと菓子折りをくれにきたばかりだった
でも今は、真っ白な隊服が全て血で染まるほどの大怪我をして蝶屋敷に訪れたのだから無理はない
下の子達も、アオイも、急いでベッドの準備をしてくれるからそこからは早かった
服を着替えさせ、体を拭いて…改めて怪我がないのを確認して着衣を整える
呼吸も脈も問題ない…ただ目を覚まさない
「…何が…あったんですか。依千さんはとても強いと聞きました…それが、こんな…」
いつ目を覚ますか分からない。覚ましたとしてもあの出血で鬼の彼女が普通でいられるのかもわからないため、四肢を固定している状態で一人見張りをつけ、日々が過ぎていた
そんなある日、アオイがポツリとそう呟いた
「そういえばあの時はバタバタしていて…ちゃんと説明をしていませんでしたね」
アオイもここで看護師として働いているけれど、鬼殺隊の一員だから隠す必要もない
それに…最初こそ依千を恐れていたけれど、今では蝶屋敷で仲のいい二人として皆に知られているくらいには仲が良かった
上弦の鬼と対峙したこと
到着した時にはすでにこの状態だったこと
鬼であるために、仕方なく手足を固定していること…
優しいアオイが辛くならないよう、なるべく濁してありのままを伝える
「千年の実績があるとはいえ、お館様でさえ彼女がここまで怪我を負ったのを聞いたことがないと言ってましたから…でもきっと大丈夫です。また飄々としながら笑いかけてくれますよ」
「…はい」
ズビッと鼻をすする音が聞こえる…やっぱり、泣かせてしまったようだ
そのアオイの頭を撫でて、部屋を出る
この後急遽柱合会議が執り行われるため、お館様のお屋敷に向かわなければいけない
念のため拘束具の緩みも確認しておいた…万が一があっても、カナヲだっている…
それだけ確認して、私は蝶屋敷を後にした