第13章 調査の呼吸
「気配も…姿も見当たらない…逃げられた…?」
突如かけられた柱全体に向けての伝令に、非番であった隊員でさえも駆け回っていた
最後の伝令によれば、裏の柱である依千さんが最初に接触したとは聞いていたけど…それ以降返事がないらしい
そして二番目には私…胡蝶しのぶが到着したのだが
「…何ですか…これは」
人間がやったこととは思えない…熊でさえもここまでの破壊はしないだろう
不自然なほどに木々は折れており、岩は砕かれ、辺りには鮮血が夥しいほど撒き散らされていた
嫌な予感がする
そう思って、折れた木々を抜けて先に進む
…すると、そこには予感が的中した光景が広がっていた
「依千さん…?…依千さん…依千さん!!」
いつもなら一回でも名を呼べばおちゃらけた返事が返ってくるが、ぐったりと座り込んだままの彼女からは声は愚か、何の反応すらも返ってこなかった
それもそうだろう…彼女の白い隊服は血で真っ赤に染まり上がり、周りは…人ならば即死であろう量の血が広がっている
すぐに駆け寄って怪我の様子と、脈の確認をする
「…怪我は…治ってるみたいですね…脈もある…」
とりあえずはホッとする
でも問題は…鬼である彼女にここまでの傷を負わせた鬼がいたということだ