第11章 急務の呼吸
「ただの鬼ではない反応だった…もしかしたらと思ったが…どんな汚い手を使って人間に寝返った?」
「なにも。私は私の実力でこの地位を手に入れただけ」
「地位だと…?あのお方の…血の恩恵をそんなことに使い、あのお方の脅威になっているお前が…堂々と刀を握るなど…ッ!!」
「ッ!」
またあの強烈な打撃が打ち込まれてくる
刀で力を流しても、あまりの衝撃の強さに刀身が震える
また折られては困るので、力を受け流したまま後ろに下がって全て流しきる
「二度目で完全に見切るか…技量だけは本物のようだ」
「いくら鈍とはいえ、そうポキポキ折られると困るんでね」
突然の急務だったため、ちゃんとした日輪刀は手持ちにはなかった
案内を終えた鎹鴉に持ってきてもらうまでの間、この失敗作の刀で凌ぎ切らなければならないとは…
「技量は確かかもしれない…だが…だが気に食わない…ッ!なぜお前のような裏切り者があのお方からの寵愛を受けているのか…」
「…寵愛…?…何のことだかさっぱりなんだけど」
「惚けるな…その身に流れるあの方の血の量は、上弦の壱をも上回っていることくらい手合わせすればわかる。なぜだ…お前のような鬼に、なぜ…ッ!!」
「ちょッ…と!!言ってる意味が、分からないってッ!」
怒りで威力も速度も増した打撃が次々と降ってくるので、それを避けるのに必死で後退する
刀で受ければ、例え流したとしても刀身が耐えられない…
そう思って所々は素手で対処する
でも剣術を極めた私と体術を極めた鬼とではこの間合いはあまりの致命的だった
「そこッ!!」
「あ…ッ!」
突然上弦の参の鬼が、手を伸ばして、掌に刀を貫通させる
そのまま拳を強く握り、惰力だけで刀をへし折られる
なんて力技…でも相手は私と違って人を食って力をつけている鬼だ
治癒能力が早く、刀が刺さった腕は数秒後には元どおりに完治していた
そのまま、回し蹴りが飛んでくるので腕で最低限のガードをするけれど思い切り吹っ飛ばされる