第9章 久しい呼吸
「ごめんくださーい」
薄暗い夜の狭霧山
そこにある一軒家の戸を叩く
送り出した手前、一切の責任を丸投げするのもなんだか申し訳ない…
そう思って鱗滝さんの元を訪ねに来たのだ
炭治郎と別れを告げてから、数ヶ月は経っている
彼が鍛錬を続けているならそこそこの成果も出てるはずだろう
数秒して戸が開かれる
「お久し振りです鱗滝さん」
「よく来た。…炭治郎は今留守だが、もうじき戻るだろう。中で待つといい」
「じゃあお言葉に甘えて…あ、これ手土産です」
抱えていた籠に入っている野菜や肉といった食材を鱗滝さんに手渡す
「炭治郎が喜ぶ」と言いながら台所に消えていった…あれは多分喜んでくれている…みたいだ
「そういえば、鬼の依千に診てもらいたい者がいるのだが」
「診る…ですか?しのぶちゃん…蟲柱ではなく私に?」
「依千でなければわからないと思うからな…隣の部屋だ」
そういって指を刺される先にあるのは、日が入らないよう締め切られた…奥にある一室
襖を開けてみる…と
「……ああ…なるほど」
そこにいたのは炭治郎が連れていた、妹の禰豆子ちゃんだった
鬼は本来睡眠を必要としないのだけど、禰豆子ちゃんはぐっすりと眠りについている
私でさえ、しのぶちゃんの毒を試すときにのみ副作用で眠ったり…血を失いすぎて気を失うようなこともたまにある程度で、ここまでの熟睡はしたことがない