第8章 稽古の呼吸
「よォ…遅かったなァ」
「相変わらずお元気そうで何より…です」
鋭い眼光で凄まれるので、思わず視線を逸らす
鎹鴉の案内で辿り着いたのは柱にのみ使用を許可されている稽古場…と言っても屋内ではなく、竹林のど真ん中である屋外なのだけど…
そこで待っていたのは不死川さんだけかと思っていた私の考えが甘かった
「……そちらの方々はなぜここに」
「無論、不死川の後に稽古をしたいものたちの集まりだ!」
「見回りもあるし、早くして欲しいんだけど…」
「…いったい私になんの恨みが…いや、鬼だからってもっともな理由があるんだけど…」
日光以外で死にはしないとはいえ、切られれば勿論痛みだって伴うし、出血だってする
しかも彼ら…不死川実弥から始まり、煉獄杏寿郎、時透無一郎の計三名は柱だ
鬼殺隊最強の一角にいる人たち…強さは折り紙つきなわけで…
「最近意味のわからねェ理由をつけては断ってきたんだァ…たまには付き合えよォ…」
「その代わりルールはいつも通り。私はコレで相手方は真剣のみで」
そういって腰に差していた二本の刀を端に置き、稽古用の木刀を辺りに五振りほどばら撒く
物の消耗が激しいのでこういった練習で真剣は使えない…木刀じゃあ技にかなり制限がつくけど、こうして辺りに落としておけば壊れても何とかなる
「それにまだ日が落ちてすぐだし…良いハンデだよね。今日こそは一本取れるんじゃないかな」
「上等だァ…今日こそはその首落としてやるよォ」
隊士同士の決闘はご法度だが、私は裏で、しかも鬼なのでその辺りの取り締まりが寛大だ…仮に四肢を落とされてもそのうち治るし
そもそも柱との稽古は条約にあるので、実は強要されたら断れない決まりがある…
「では、俺が審判を勤めさせてもらおう!…二人とも準備は良いようだな!」
煉獄さんが私と不死川さんを交互に見てその旨を確認する
こういう時ばかりはおちゃらけていられない。切られれば痛いのだ…避けれるなら避けたほうがいいに決まっている
私も不死川さんも、集中して呼吸を整える