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千年越しの恋情記 【鬼滅の刃】

第5章 薬の呼吸





トントントン…トントン…

もうあと少ししたら日が昇ってしまう
なんとか蝶屋敷には着いたけど結構切羽詰まった現状に、戸を叩く回数が異様に増える



「はい…どなたです……あ、貴方は…」



黒い髪を二つ縛りに結んで、目のパッチリとした女の子が戸を開けてくれる

私の顔を見るなり驚いた様子で身を引いて招き入れてくれた



「早くこちらに…もう日が出ますよ…!?」

「アオイちゃんが早起きで良かった!ちょっと焦げるの覚悟してたんだけど助かったなぁ…」



少女の名前は神崎アオイという、この蝶屋敷で働く鬼殺隊だ

鬼殺隊なのに看護婦のようなことをしているのには色々と事情があるから、深くは追求してはいけないのだ



「こんな時間まで外にいるだなんて珍しいですね」

「仕事だからね。それよりしのぶちゃんいるかな…薬出して欲しくて来たんだけど…」

「今日は非番でずっと屋敷にいるって言ってました。こっちです」



そう言って日が差してきた屋敷内の、日陰の道を通って案内をしてくれる


思えばここの人たちと打ち解けるのには随分苦労した記憶がある


数年前

しのぶちゃん…現在の蟲柱と呼ばれる彼女の姉、カナエちゃんと仲が良かったこともあって、何度かここに出入りしていたのだけど…

鬼殺隊員にとって鬼というのは仇そのもの。滅殺するべき忌む存在だ
そんな私が療養所であるこの蝶屋敷に出入りしていることを、当時はまだよく思っていない人が多かった
…いや、今もよく思ってない人は多いけども…

今私に道案内をしてくれているアオイちゃんも、当時は結構毛嫌いされていたっけ…


数年前のそんなことを思い出して、少しクスッときてしまう



「どうかしましたか?」

「いや……初めてあった時アオイちゃんに、貴方みたいな人食い鬼が出入りしていいところじゃない!出ていけ!って言われたの思い出しちゃって」



あの時の形相はすごかったな…鬼に恐怖して刀を握れなくなってしまったとカナエちゃんに説明をされていたけど

彼女は鬼である私に、ここの人の為にそう怒鳴ったのだ…怒っていたけどとても震えていて怖かったろうに


そう言った私の言葉に、恥ずかしそうにしながらも慌ててアオイちゃんが否定する
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