第4章 旅の呼吸
「て言うことがあって…炭治郎たちを探しに来たわけなんだよね」
「な…なるほど…」
ここにくるまでの経緯を簡単に掻い摘んで説明する
道中で軽く自己紹介もしたし、経緯も話したし、あとは特に話す必要があることはないかな…
ここまで来るのに一日経っていて、禰豆子ちゃんを日光から守るための籠も装備済みだし、これなら炭治郎だけでも禰豆子ちゃんを連れて明るいうちでも出歩けるだろう
あとは無事鱗滝さんの元に辿り着くだけ…
なんて思っていたのも束の間
通りかかったお堂の手前で妙な気配がした
「…静かすぎる」
「え?…あ、あそこお堂ですね!休ませてもらえ……っ!?」
近づくにつれて増してくる血の匂いに、炭治郎も気がついたのだろう
ここには鬼がいる
「んー…まだ夜になってからあまり時間が経ってないんだよねぇ…炭治郎、絶対側を離れないでね」
「はは、はい…分かりました」
怖がってはいるけど、側にいる妹を抱き寄せている
妹想いのいい兄だなーなんて思いながら、腰に掛けてある刀を引き抜く
お堂に続く階段を登りきると、そこはまさに地獄絵図そのものだった
飛び散る血飛沫、四肢…〝人だったもの〟が辺り一面に転がっている
そしてその中央に蠢く影があった
「…あ?…なんだお前ら…」
「良い天気だよね、こんばんわ…突然で悪いんだけど滅殺してもいいかな」
「…その格好…でも、お前のその気配は…」
ニコッと一度だけ微笑んで、刀を構える
相手の鬼は酷く動揺しているようだった
「裏切り者がぁ!!鬼でありながらそんな刀を持つなんて!!」
「別に鬼とか人とか関係ないよ。私はそうしたいからそうしているだけ」
「ふざけるな…ふざけるなぁ!!」
そう叫びながら、二体の鬼が走り寄ってくる
呼吸を整えて、静かに集中する
「鬼の呼吸…一ノ型…睦月」
二体の鬼の頸を、横薙ぎの一線で同時に落とす
切り離された胴体はぼろぼろと崩れ落ちていった