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〈短編〉H×H

第58章 満員電車/クロロ/現パロ痴漢


今日は最悪の金曜日だと思いながら家を出た。


朝から大雨に大風、こういう日は電車が遅れるのはセオリーであるし、普段より30分も余裕を見て家を出たというのに 想像以上にダイヤは乱れ見積もったはずの30分はあっという間に亡きものになってしまった。

電車が遅れているし他線が止まっている分、流れる人や滞る人が倍速で増加していくのは当然のこと。乗り換えを要する大きな駅のホームは人で溢れ 階段の上にまで電車待ちの長打の列が出来ていた。
それでも出社するにはその列に並ぶより他ない。上司に遅刻連絡のメールを打ちながら深く溜息をついた。


何本か電車を見送った後。ようやく乗れるか乗れないか 微妙な境地がやってきた。電車がホームにつき扉が開くや否や サラリーマン達は我先にと電車に乗り込む。

雨に濡れた傘と服が悶々と車内の湿気を高めてゆく。なだれ込み 人口密度が最高に達する車内に入るその刹那、ふとある男性と目が合った気がした。



「次の電車が参ります!お待ち下さい!押さないで下さい!次の電車をお待ちください!」



駅員が 扉に群がる人々を律する、また数分の遅れをもって電車がゆっくり動き出す。

電車内の満員ぶりは日頃とは比べものにならぬほど。耳に突っ込んでいたiPodのイヤホンが人の波にのまれてもつれ、切れるのでは思うほどにピンと張り 仕方なしにそれを無理やり耳から抜いた。肩にかけた通勤バッグはサラリーマン達の身体の間に飲み込まれ引き戻す事も出来ない。

強制的に身体が前の人に押し付けられる。密着する相手は中年男性ではなくまだ若いサラリーマンであったのが唯一の救いかもしれなかった。


それでも状況はあまりに酷い。タイトスカートを膝で派手に開かれているし 胸はべたりと胸板に潰れている。蒸しかえる電車内でそんな体制になり不快極まりないが、この人の多さでは回避のしようもない。

幸いにも電車に乗るのは一駅分、時間にすれば5分もかからない。大人しく我慢するしかない、そう言い聞かせながら 視線を下げて 目の前の白いワイシャツを見ていた。

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