第1章 【爆豪】序章【派閥】
「に、しても爆豪。お前この子に肩入れし過ぎじゃなぁい?」
「あ?」
「そんなに気に入っちゃったの?」
煙草を灰皿にして押し付けて火を消しながら云う。
此処は俺たち4人で住んでいる。俺と上鳴はもともと事務所が近くルームシェアをしていた。
其処にニューヨークから帰ってきた爆豪がファットガムのサイドキックをやっていた切島を誘って事務所を立ち上げることになった時、関西から関東に越してくる切島が転がり込んだのが切っ掛けだった。そのままどうせならもっと広い家に引っ越すかと云う話になり、それが二転三転して何故か現在4人で都内の高級マンションの最上階でルームシェアをしている。
初め爆豪は厭がったが寮生活を思い出すな、と切島と上鳴が嬉しそうに話すので結局折れてしまった。何だかんだ爆豪はこのふたりには甘いのだ。
「何か文句でもあんのか、あァ?」
俺を威嚇するような声を出す爆豪。それに上鳴はビビるが、俺は御構いなく二本目の煙草に火を着け煙りを吐いた。
此処はセキュリティは抜群で個人の部屋もそれぞれあるし、その上で空き部屋だって充分にあった。彼女が一緒に暮らすのはなんの問題もない。が。
「最初にシェアする時に決めたろ? 女の連れ込みは禁止だって」
「それは決めとかねぇとお前やその阿保面が女連れてヤりまくるからだろうが」
確かに。その結果、俺と上鳴は部屋だけじゃなく女をシェアすることもあるくらいだった。
「じゃあ、何? 爆豪はその子に手ぇ出さねぇってのね?」
「……出すかよ、クソがッ」
「え! そうなの! かっちゃんこの子に手出さないの!! じゃあ俺がこの子狙っちゃおっかな!!? ね、よろしくね!!」
「おい、上鳴やめとけって」
相変わらずの様子の上鳴に切島が云う。
「何ぃ? 切島はこんっな可愛い子目の前にしてなんとも思わねぇの?」
「え、いや、その俺っ、はっ」
上鳴が抱き締める少女が切島に視線を向けと、切島は顔を真っ紅にして狼狽えた。お前ちょろ過ぎじゃね?