第1章 【爆豪】序章【派閥】
「はいはーい、逃げないでね」
「やだっ、いやだ、離してっ!!」
「怖くないからね」
云いながら籠の隅へと逃げる少女を傷付けないように手を伸ばすとパチリッとその手が痺れた。電気系の個性か。
その勝ち組個性は今別の場所にいるチャージズマを思い出させる。あいつも小さい頃、個性目的で誘拐されそうになったと話していたことがあった。
「いやだ、いやだっ、なんでっ、なんで私だけがっ」
泣きじゃくりながら少女は無意識なのだろうパチパチと放電し続け、それを纏っている。薄暗がりの中、輝く姿は綺麗だな、と思う。
その綺麗な個性で何人も男をベッドの上で殺めて来たんだろうね。
彼女たちの手は本人たちが望まなかったとしても、もう既に穢れきってしまっている。俺にはこれ以上、どうしてあげることもできない。
俺は改めて烈怒頼雄やチャージズマが此処にいなくて良かったと思った。あのふたりは優し過ぎる。きっとこんな姿を見たら彼女たちを逃がしてあげたくなってしまうだろう。
「ごめんね」
そう云って俺は放出したテープで彼女を拘束した。放電しても無駄だよ。セロハンテープって帯電性なの。