第13章 洛陽での出会い《回想》
「ただいま…」
「神威、どこ行ってたアルか?」
「おかえり、神威。あら、お客さん?」
ベットに座り小さな女の子と話をしていたその女性は、おそらく神威とそばにいる女の子の母親だろうか
とても美しく、凛とした人だった
「初めまして。未来と言います」
「あら、どうぞ入って。神威が女の子を連れてくるなんて、初めてね」
「わあ、お客さんアル!」
母親らしき人と女の子は、未来を歓迎した
「そんなんじゃ…。未来は医者なんだって」
「え?」
「とは言っても、まだまだ見習いの身で…。神威くんから聞きました。あまり体調が優れないと…」
「…ええ。そうね…神威、神楽。お客さんに出すお菓子、買ってきてくれない?」
「いえ、そんな…」
「お願い、神威」
優しい口調なのに有無を言わさないところに、母親の威圧感を感じる
「分かったよ…。未来、母さんに変な真似するなよ。…神楽、行こう」
「未来、ちょっと待っててネ」
神威は渋々といった感じで、妹の手を引いて玄関の戸を閉めた
「あの子達にはあまり聞かせたくなくてね」
「ごめんなさい、不躾に…」
「いいのよ。私は、私が生まれた徨安と言う惑星でしか生きていけないの」
江華は普段離さない自分のことを、何故だか未来に話してもいいと思えた
「徨安…ってまさか、かつての大戦によって滅ぼされた夜兎の母星のことですか…?」
「さすがはお医者様、知識は豊富ね。…そう、徨安に満ちるアルタナの加護がない限り、私は生きていけない」
遠くを見るような眼差しは、とても悲しく見えた
「アルタナ…大地を巡る惑星の生命エネルギー…、龍脈のことですね…。
その加護があれば、不死の生命を持つと言われている。…もしかして、あなたもアルタナの影響を受ける一人なんですか?」