第10章 交差するそれぞれの思い.
総悟が見えなくなると、ミツバは指定の座席へ腰をかけた
窓際の座席から見える景色はみるみる田園風景に変わる
窓の外の流れる景色をただ眺めるミツバ
「隣、いいかァ?」
「あ、はいどうぞ…、っっ!」
声のする方は振り向くと、そこにはもう会えないと分かっていても諦めきれない人が立っていた
「…十四郎さん…?」
驚きのあまりそれ以上言葉が出てこない
土方はそんなミツバと目を合わさず横の座席にぶっきらぼうに座る
「…ただの護衛だ。気にするな」
素っ気なく言い放たれるもその格好を見て思わず声が出た
「制服着てないのに…?」
土方は休日にいつも着ている着流し姿
座席に座り、ミツバの反対側に視線をやる土方の顔を覗き込むミツバ
矛盾を言い当てられ、観念したように視線をミツバに移す
「惚れた女守るのに、格好なんて関係ねェだろ」
見開くミツバの大きな瞳には、どう映ったのだろうか
二人を乗せた列車は、夕日で燃える景色に溶けていった
「本当、気に食わねェヤローでさァ」
ホームに一人佇み、目を細め夕暮れに染まる空を眺めていた