第9章 交差するそれぞれの思い《回想》
それから何年が経っただろう
未来が江戸に戻ったあと、間もなく父親を、その後母親を亡くした未来は、もうあの避暑地へ訪れることはなかった
それでも一度だけ、宇宙へ旅立つ少し前に未来はミツバの元を訪れた
総悟は道場の仲間たちと江戸へ行ったと聞かされ、すれ違いになってしまった
「総ちゃんも未来ちゃんに会いたかっただろうな。いつもこの川に来てたんだよ」
未来とミツバは二人、川のほとりで佇んでいた
「一人で寂しくない?」
「本当のことを言うと寂しいよ。でも、総ちゃんやみんなが頑張っていることを、私はきっと誰よりも知ってるわ。だから、私もここで頑張ることに決めたの。いつか身体が良くなったら、今度こそ江戸に遊びに行くからね」
ミツバは肺に重い病を患っていた
それでもいつか治ると信じて強く笑うミツバ