第9章 交差するそれぞれの思い《回想》
未来が去った後、総悟は一人であの川辺によく行くようになった
未来と初めて出会ったあの川辺へ
「いたいた。またここに来てた」
「姉上…」
背中から聞こえたミツバの声に振り向き、総悟は薄く笑った
総悟は川の水に足を浸し休憩している
傍には木刀が転がっていた
「またここで素振りしてたの?こんなになるまで…」
「ここの方が集中出来るから」
ミツバは総悟の手を取り、総悟の掌を見つめる
血豆だらけの掌を見てミツバは優しく笑う
このやりとりももう何十回目だろう
「まだまだだ…。これくらいじゃ…」
キラキラと太陽の光が反射する川の水面を見つめながら、総悟は呟いた
「未来ちゃんのこと好きなんでしょ」
「……っ」
思いもよらないミツバの一言に、顔を真っ赤にし目を見開く総悟
「な、何言い出すんですかっ。別にそんなんじゃ…」
「私も好き。総ちゃんと未来ちゃんのこと。ふふ、元気でやってるかなあ」
図星を突かれ戸惑っている総悟が微笑ましく、あの頃を懐かしむミツバ
木々は赤く色づき始めていた
あの頃と同じ夏がまた終わろうとしていた
そして、一匹の蛍が空へ飛び立っていった