第9章 交差するそれぞれの思い《回想》
「ミツバちゃーーん」
「姉上ーー」
蛍に夢中になりミツバとはぐれてしまった
蛍の光が無くなると、陽も沈み辺りは真っ暗になっていた
未来と総悟はミツバを探しながら、神社の境内まで戻ってきたがミツバの姿は無さそうだ
「姉上ーー」
「ここには居ないみたいだね…。神社の入り口の方に戻ってみよう。ミツバちゃんなら大丈夫だよ」
「うん…」
いつになく不安そうな総悟を励ますように未来は明るく言った
「おい、あれ、近藤と同じ道場のガキじゃねぇか?」
「近藤って、あの浪人をかくまってたやつのことか?」
「ちょうどいいじゃねェか。このガキ使って近藤に痛い目合わせてやろうぜ。ちょうど仲間ボコボコにされて、むしゃくしゃしてたんだ」
暗がりの茂みから出てきた複数人の男たちは、総悟を見つけると薄ら笑いで近づいてくる
「誰だお前たち。コンドーとあんなヤツにやられるなんて、どうせ大したことないんだろ。ガキにしか仕返しできないなんて、ダセェやつ」
いつもミツバにくっついている総悟とは思えないほど堂々とし、さらに相手を挑発する
「総ちゃんっ」
「ガキが舐めた口きいてんじゃねぇよっ!」
男は手に持っていた刀を鞘から抜き、鞘を地面に叩きつけると、総悟を狙い高く振りかぶった
威勢のよかった総悟もその光景に固く目をつむってしまった
「総ちゃんっ!」
ザシュッーーーー