第5章 .落花と記憶
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太陽が辺りを明るく照らし始めた
酒に溺れた男共は大地の上に眠りこけ
女子供は寝屋で眠る
黎明が誘い出す
窓の隙間から光を覗かせ
「おいで」と声をかける
それに応えたものは目を開き体を起こした
素足のまま体は求めるかのように足を進める
砂利や硝子の破片が足を傷つけたが気にならなかった
だって朝焼けがとてもきれいだったから
『......戻りたい、のかな』
この世界で暮らすうちに
自分が元の世界に帰りたいのか、
帰りたくないのか分からなくなった
新しい出会いに思い出、
それぞれが足と手に枷をつけ始めていた
ここに居たい、思い出が増えれば増えるほどそう思ってしまった
もしかしたら、現実の私はもう死んでるのかもしれない
ならいっそこのままで.....
だけどそれをダメだと止める何かが自分の中にいた
『朝焼けって、まるで炎...みたい.....ッ..』
____怖がるな、前を向け
どこからが聞こえた声に反応し振り向いたが、
そこには誰もいなかった
聞こえた気がしたんだ、みんなの声が、家族の声が
『やっぱり、』
私には、何かが足りない
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