第5章 .落花と記憶
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2人の間に広がる雰囲気は、
先程より幾分か明るくなった
そう思えるほどクムユの顔は緩くほどけていた
クムユ「そんなお優しいサッチさんなら
私のお話、聞いてくださるかしら...?」
立っていた膝を折り
車椅子の横にあった石に腰をかけた彼は
持っていた酒瓶に口をつけ、
ぐびっと一口飲みこみ、腕で口を拭った
サッチ「おうおう、そんな優し~サッチ様になんでも話してみな」
ふざけたような言葉を使っているが
声は柔らかくて優しかった
彼なら話してもいいかも知れない、そう思えた
わざわざクムユの背丈に合わせて地べたに座り、
話しやすい雰囲気を醸し出しているサッチは
女好きだから自然にそういったことが出来るのか、
はたまた、ただたんに気遣い上手なのか
出会って数時間のクムユには判断できなかった
クムユ「そうね、貴方になら話してもいいかもしれないわ
ただの独り言だと思って聞いてくれても構わない、
私の創造する一つの未来、話はそんな感じだから...」
サッチ「酒の余興って感じに聞いとけばいいなんて言われても、
俺ァ最後までちゃんと聞くぜ」
俺が聞きたいって思ったんだからな!
彼の言葉にまた笑いを零した
誘いに来た貴方を、
今度は私が誘い込む番になるだろう
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