第5章 .落花と記憶
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どんちゃん騒ぎの宴の中、
ある人物だけは心の底から楽しめていなかった
気がかりなことがたくさんありすぎて
遠くを見つめている、そんな目をしていた
サッチ「どうしたんだいお嬢さん?
七都ちゃんが帰ってきた時はあんなに嬉しいそうな顔してたのに、
今はそんな顔じゃあねェな......」
何かあったのか?サッチがそう尋ねた人物、
それは車椅子に座って少し離れた端から
宴を眺めていたクムユだった
七都が帰ってきたときに見せたあの嬉し泣きの顔が、
今はどこか儚げで哀しそうな表情を浮かべている
2人の周辺には誰もおらず、皆騒ぎの中心にいるためか
その空間は他と比べると少し静かすぎた
クムユ「...そんな顔をしていましたか?」
俯いていた顔をゆっくりと持ち上げ辛そうな笑みを描いているクムユ、
それを見たサッチの顔も心做しかだんだん暗くなっていっていた
サッチ「ああ、まるで何かとの別れを惜しむような面してたぜ
どうだい嬢ちゃん?
この俺様にいっちょ相談してみるってのは!」
胸を張って言ったサッチ
そう言われるとは思っていなかったクムユは少し静止した
そしてクスクスと笑いだして
私はもう嬢ちゃんなんて歳じゃ無いわ、と言った
30代に入ったクムユに対して
"お嬢ちゃん"という表現は確かに合わないだろうが
これはきっとサッチなりに彼女の暗い気持ちを和らげる
ジョークが混ざっていたのだろう
クムユ「私の名はクムユよ」
サッチ「俺ァ…クムユ「サッチさん、でしょ?」」
宴が始まるまでの空き時間
七都には冒険談を話してもらっていたクムユは
容量のいい頭のおかげで隊長達の名前と顔はもう既に覚えていた
クムユ「かの四皇、白ひげ海賊団4番隊隊長・双剣のサッチ
七都からは女好きでおふざけの多い
フランスパンっぽい頭をした男って聞いてるわ」
またクスクスと笑いだしたクムユ
サッチはそんな紹介の仕方しなくてもぉ
としょげていた。
クムユ「......でも女心を分かっていてお料理が上手で
気遣いのできるお兄さん、とも聞いてるわよ?」
サッチの機嫌を治すには十分な言葉だった
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