第5章 .落花と記憶
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七都がいなくなってからどれだけの月日が流れたのか
そんなもの数える気力すら失った
きっとなんのこともなくひょっこり現れるんじゃないか
あの子のことだからきっとそうよね
だから私はいつでもあの子が帰って来れるように
美味しい料理を作って
好きだと言ってくれたジャスミンティを
二人分テーブルに用意して
初めて会ったときにいた
時期外れの金木犀が咲くあの庭に車椅子を動かした
自分の子でもないあの子が、
自分の元に帰ってくるなんてない
生きていても彼女ならこの世界でも渡り合っていける
もしかしたら、
他の場所で幸せな暮らしを送っているのかもしれない
マイナス思考な私を村の人達はいつも励ましてくれた
クムユ「帰ってくるのよね...カホ」
優しい風と金木犀の花が心地よい香りが
大丈夫
そう言っているように感じられた
クムユ「さ、そろそろお昼の時間ね
支度をしなくちゃ!」
そう思い車輪に手をつけた時だった
『あ、そこの車椅子のお姉さん!!』
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貴女が私に初めて会った時に言った言葉
まるで私たちの合言葉のようで
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