第4章 .虚構の手紙
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心地よい風がクムユの短い髪を、
カホの長い髪をなびかせる
不自由の無い体を動かしたくなる衝動がはしる
クムユは深い深呼吸を3回繰り返し、
立った場所でくるくると回りだした
クムユ「...そっか、少しだけ心が軽くなった気がするよ
カホがそんな顔をして言うんだもん
......後悔は無いんでしょ?」
回っていた足を止め、カホに背を向けて話す
目の先には青い空と、端に映った金木犀の花
金木犀の香りに、思い出の詰まった赤い屋根の家
どれもこれも故郷のもの
カホ「えぇ、後悔なんてしてないわ」
その言葉が聞ければ十分よ
いつの間にか姉の背丈を越してしまっていた
いつの間にか姉の歳を越してしまっていた
いつの間にか姉の様な喋り方になっていた
いつの間にか思い出に蓋をしてしまっていた
あの日から20年以上もの月日が経って
私は変わったことがいっぱいある
でも、そんな中にも
変わらないものはあったんだよ
貴女のことだけは、
一時も忘れることは無かった
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