第3章 .届かない想い
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カホが乗ったブランコはそよ風に揺られキコキコと音を立てながら前後に微動していた
庭に生えた金木犀の花が心地よい香りを漂わせている
花が咲いていることからこの気候は秋
そして私の故郷は秋島
ここは本当にあの場所なのだろう
横にある金木犀を見上げているカホは何故だかとても儚いような気がした
カホ「いつまでそこに突っ立っているつもりなの?
こちらにいらっしゃい、クムユ」
クムユ「...カホ......な..の?」
信じられないと言わんばかりの私の震えた声
カホの声を聞いた途端、私の目から溢れんばかりの涙が浮かび上がる
するとカホは私に向けて優しく微笑んだ
カホ「私以外の誰に見えるのかしら?」
クムユ「ッカホ!!」
私はいつもなら動かない足を動かしカホに向かって走り出し、抱きしめた
クムユ「カホぉ...ッ...」
カホ「ほんと、私の前だと泣き虫になるのは変わってないのね」
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