第11章 こっちを見て〜緑谷出久〜体育祭前〜
「な・・・なんか今日 出久くん変だよっ」
「だってこうでもしないと僕の立ち位置はずっとこのままだもん」
「へ?立ち位置?」
キョトンと首を傾げる様子にもう片方の手で華の長い髪を掬い取る
「そう、幼馴染じゃなくて僕っていう人間を見て、ね?」
そう言って掬いとった髪に口付けるとボボボって音がしそうなくらい赤くなった口をパクパクさせながら
「ね、呼ばないともう一回しちゃうよ?」
言いながらまた髪を掬い取ると
「うわぁぁぁっ!!イズクっ!イズク!呼んだからやめてえっっ!」
ゼハゼハと息をしながら呼んでくれた華に、まぁ、いいかという様に手を離す
その瞬間に、鞄をひったくるように抱えて立ち上がり
「きょっ・・・・今日は1人で帰ってぇぇぇぇぇっ!!」
と言って走って行かれた
「・・・・逃げられちゃった。」
手を離した手は空を切り、その手をじっと見つめる
「僕の立ち位置華ちゃんの中でちょっと変わったかな?」
少しいきなりだったかな?
でももう嫌なんだ、幼馴染のフィルターなんて
フィルターなしの僕を見て。