第11章 こっちを見て〜緑谷出久〜体育祭前〜
もうすぐ体育祭がある。
ヒーロー科は全員参加だけど、普通科は希望者だけの参加で彼女は応援にまわると言った
「体育祭楽しみ〜っ私は応援だけど沢山応援するからねっ」
ガッツポーズをする華の仕草に出久は笑った
あれから華は徐々にだがクラスの人達と仲良くなった
元々、性格的に明るいし、物怖じはしない性格なので、1度心を許せばするりと入り込む
一時期、個性のコントロールが出来なくて、知らない人に追いかけられたりなどしてふさぎ込んでいたが、
高校に入学すると少しづつコントロールの仕方も人との付き合い方も上手くいっているようで出久は安心した。
安心もしている、と同時に少し寂しくも彼の中にはあった
僕だけが知っている華の姿がまわりにも知られるようになった
幼馴染で僕だけの特権が徐々に薄れてきた
華の隣にいる幼馴染の特権が薄れてきた今、次の特権が僕の中で大きく欲しくなった
「ねぇ、華ちゃん、お願いがあるんだけど」
「お願い?珍しいね、出久くんからお願いなんて。何?」
いつものように一緒に帰り、近くの土手で2人仲良く缶ジュースを飲む
これが最近の日課だ
華は飲んでいたジュースを下ろし、何?と首を傾げた。
「今度の体育祭、僕頑張るからさ、応援してて」
「 ??もちろん、いきなりどうしたの?」
「華ちゃんの事だから、応援してくれるのは分かってるけど、僕だけ見て、僕だけ応援して」
「へ・・?い・・・いきなり何?出久くんどうしたの?」
「違う、名前で呼んで?」
「だ・・・だから名前で呼んでるじゃない?どうしちゃったの?」
無意識に後ずさろうとする華の手を掴んでじっと見つめる
「華ちゃんだけなんだ、僕のこと出久くんって呼ぶのは、でもそれは幼馴染っていう枠の呼び方だよね?だったら呼び捨てでイズクって呼んでよっ」
「えぇっ!!だって昔から出久くんだし、今更呼び捨てなんて・・・・恥ずかしいじゃない」
驚いた顔をしながら少し目を伏せて、最後の言葉は消え入りそうな声で口ごもる
昔から可愛い華ちゃん、その口で呼んで欲しいんだ