第10章 慣れない環境〜共通〜
机に拡げられたお弁当は三段のお重に綺麗に詰められていて、なんだろう、この運動会に出てくるお弁当のイメージは
それでも彩り豊かで、目も楽しかった
「えと、じゃあ頂きます。」
律儀に手を合わせて綺麗に盛られた玉子焼きを口にすると優しい味がした
「華ちゃん!これ美味しいよっ」
嬉しそうに目を輝かせる様子に
「どれどれ、俺にも玉子焼きっ」
そう言って出久の後ろから声を掛けて手を伸ばしてきたのは切島くんで
「ごらぁっ!!何勝手に食ってんだっ殺すぞっ」
ピシャリというかバシリという音を立てて伸びてきた手をはたくとギロリと睨みつける
「いいじゃねーか、爆豪〜こんなにあるんだしよ」
叩かれた手を抑えながら別のに手を伸ばそうとするとそれをまた爆豪くんが叩き落とす
その様子に思わず笑ってしまう
「ふふ、こんなのでいいなら今度作ってくるよ?」
「マジで!?」
その言葉に周りの生徒も、じゃあ私にも!僕にも!となったので皆んなの分を作る約束をした。
「華ちゃんは優しいね」
そう言って出久がコロッケを口に入れようとすると
「あっっ!!ダメ出久くんっ」
止めようとしたが遅かった
「ぐはっっ!!か・・・辛っっ!華ちゃん何これ!」
「ご・・・ごめん、それ爆豪くん用に作ってきた激辛カレーコロッケ・・・・伝えるの忘れてた」
咳込みながら慌てて華が淹れてくれたお茶を飲む 死ぬかと思った
爆豪は嬉しそうにコロッケを平らげる
「俺好みの味作るとか、褒めてやるよ」
激辛好きの爆豪にとっては好きな味付けであり、何より自分が辛党だというのを覚えてくれていた事に嬉しさがこみ上げる。
にやけた顔を悟られないように爆豪はパクパクと口へ放り込んだ
「あ・・・それじゃ、私教室戻るね」
綺麗になくなったお弁当を包むと、それを抱えるようにして出て行こうとした
「あっ、華ちゃん、美味しかったよ、ありがとう!」
「・・・・・美味かった」
後ろ姿にそう声を掛けると嬉しそうにはにかんで走っていった
誰かがボソリと呟いた
「嫁にしたい。」