第8章 気のゆるみ〜轟焦凍〜プロローグ編
轟目線
昼飯を早く食べ終えたから、昼寝でもしようかと中庭の丁度いい場所を探していたら彼女に遭遇した
勢いよく出て来てしまったから驚かせてしまったか?彼女の驚いた声に申し訳なさを感じた
「あれ?轟くん?」
彼女が俺の名前を知っているのに驚きだった
彼女がクラスに来るのは何度か見た事はあるが、直接話した事はなかったから
「出久くんと同じクラスでしょう?」
と言われると納得した
緑谷経由で知ってるってだけか、彼女が別段俺のことを気にしていてくれるわけないかと どこか気持ちが落ち込んだ
当たり前じゃないか、特に話した事も何にもないのに
「そういうアンタはよく緑谷といるよな確か・・・・・」
名前を知らない振りをした。勝手に知ってたら怖いだろう?クラスで有名だから名前くらい知っている。
でも知らない振りをした。何かキッカケが欲しいって思うのはいけない事か?
「如月華だよ。取り敢えずよろしく?」
そう言って笑顔で手を差し出すから思わず握り返してしまう
「あぁ、こちらこそよろしく如月」
と少し笑って返すと、ふと目に止まった首すじの痣?
普段はよくわからないもんには極力手を出さないんだが、彼女の首すじに綺麗に咲いている赤い花が触りたい衝動に駆られて思わず
「お前、首に何か付いてるぞ」
と言って、握っていた手を首すじに当てた
その瞬間
むせ返るような花の香りにまるで花畑にいるような錯覚に陥った
白い光に包まれて、何故だか頭が異常にクラクラして目の前にいる華をどうしても抱きしめたくて
手を伸ばすと同時に光のもやから突然「ごめんっ!」という声が響いて今度はまた別の煙に包まれた
暫くして煙も落ち着き辺りを見回すとそこにはもう華の姿はなく、轟1人がぽつんと立っていた
「何だったんだ・・・・」
ポツリと言葉が零れ落ちた
何故煙に巻かれたのかも、華がいなくなったのも分からないが
あの衝動はなんだ
いくら少し気になって見てしまう華
やっと言葉を交わしたのに
あの、クラクラする感覚と抱きしめたい衝動
起こるわけがない
俺は口元を押さえてボソリと呟く
「・・・・個性か?」