第36章 見つめていたい
「彼女?彼女って誰の事?」
ワザとらしく首を傾げながら聞き返す清十郎の顔は分かりませんという顔をしている
「あの…だから…「ワザとらしい顔してんじゃねーよ 華の事言ってたんだろ」
途中で更衣室から引き返して来たのか 勝己が入り口の前に立っていた
「さっきの話が華ちゃんだとしたら彼女の個性を知ってるって事ですよね?」
「そうじゃなきゃあんな話しねーだろが」
出久の質問に勝己が出久の言葉を奪うかの様に答えれば清十郎は変わらず笑みを浮かべていた
「あぁ、もしかして爆豪くんは自分達以外の人間が彼女の個性を知ってるのがお気に召さないのかい?」
顔色を変えることもなく勝己に視線を向けて口にした
「ンな事誰も言ってねーだろうが」
「あの…柳さんは華ちゃんの個性を受けたから知ってるんですか?」
もし知っているのなら彼女の個性を受けた経験があるという事だ
「さぁ?それはどうかな?」
否定も肯定もする事なく笑った清十郎からは真意が読み取れない
「ほらほら〜あんまりここに長居してると次の授業に遅れるよ」
これ以上は何も話さないだろうと思った出久は大人しく踵を返した
「オイ、アンタ華の事 どう思ってんだよ」
踵を返した視線の先には爆豪が清十郎を睨みながらそう質問していた
「ちょっ…!かっちゃん 急に何をっ…」
慌てて出久は勝己の袖を引っ張って止めようとしたが 思い切り「触んなやっ!」と言って振払われてしまった
「どう?…どうって…」
一瞬顎に手を当てて考える様な素振りをしてにやりと清十郎は笑った
「とても愛おしくてたまらないよ」