第35章 イレギュラー
きっと勝己は彼女に想いを寄せているのだろう
そうじゃなくても特別な存在だと見て取れる
それは彼女に対する態度 仕草 視線 どれを取っても分かりやすい
それが無意識なのかはたまたワザと見せて牽制しているのかは分からないが
多分気がついていないのは当の本人華だけだと全員が思う
逆に気が付かないほうがワザとなんじゃないかと思ってしまう
「ライバル?清十郎さんは確かに強いけどヒーロー志望じゃないから違うと思うんだけどなぁ」
とまた明後日の方向に考え方が飛ぶ
「えっ!?あんなに強いのに柳さんはヒーローにならないの?」
あんなに強いのであれば沢山人を助けられるヒーローになれそうなのにと思っていたので華の言葉に思わず出久は思わず声を出していた
「うん、清十郎さんは昔から自分の家を継ぐって決まっていたから」
「じゃあ華は小せえ頃からその柳さんの道場に通ってたのか?」
焦凍の言葉に華はう〜んと考え込むように宙を見上げると
「小さい頃の記憶だから曖昧なんだよね、気が付いたら通ってたから」
華の何だか気になる物言いに若干引っ掛かったが特に気にはしなかった
「あの…柳さんって昔からあんな感じなのですか?」
おずおずと八百万が聞くと華は嬉しそうな顔をした
「そうっ、昔から優しくて落ち着いてて理想のお兄ちゃんって感じ」
彼女の口振りからしてあのチャラい感じの姿は見せたことがないのであろう
あの2面性の姿を見たら誰だよっ!と突っ込みたくなる
きっと彼女はあのチャラい柳清十郎は見たことがないのだと誰もが思った
「お前あんなのが理想の兄ちゃんだったら苦労…ぐふっ…!」
焦凍の空気を読まない言葉に慌てて近くにいた出久や上鳴達が取り押さえた
「わ〜っ!とっ轟くんっ!それは言っちゃいけないやつだよっ」
「馬鹿かっ!こんなんバレたら俺達が授業でボロボロにやられるぞっ!」
「ぷはっ…!そんなのボロボロにならなきゃいいだけの話だろ」
「お前はならなくても俺達はなるんだよ、お前みたいにチートじゃねーんだよ」
口々に必死に止められてようやく焦凍は押し黙った
「なんかみんな仲良しなんだねぇ」
とワチャワチャしてる様子を全く的外れに呟く華に八百万達は何とも言えない顔で苦笑した