第29章 決意〜相澤消太〜
特に欲しいものはなかったけどあの場に居たくなくて、頭を冷やしたくて飛び出した
勢いで言ってしまったとはいえ消太くんの表情や答えを聞くのが怖くなって「ずぐに戻るから!」と言いながら慌てて飛び出した
あてもなくトボトボと重い足取りで歩きながら近くの公園のベンチに座った
ぼーっと空を見上げながらぐるぐると色んな事を考える、だけど10代の華の頭では到底答えが出ない
その事に深いため息を吐くと、後ろからポンポンと肩を叩かれた。
ゆっくりと振り向くとそこには見たことのある人物がいた
「こんにちは、アナタ緑谷ちゃんのお友達よね」
肩を叩いた人物は出久くんと同じクラスの目がクリクリの髪の長い少女だった
「えっと・・・・確か出久くんのクラスの「蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんって呼んで」
ニッコリと笑うと優しい雰囲気が更に深まった
「見覚えのある顔があったからつい声を掛けちゃったわ、迷惑じゃなかったかしら?」
ケロっというように小首を傾げる姿にゆっくりと首を振った
「まさか、むしろ声を掛けてくれて嬉しい」
そう答える華の様子に何かしら感じたのか隣に何も言わずに座った
「・・・・あの・・・?」
「ドーナツがとても美味しそうで沢山買ったの、手伝ってくれないかしら?」
言いながら手に抱えていたドーナツが入った袋を掲げてじっと見つめる姿に僅かに動揺を見せる
「あの・・・でも、悪いわ」
「あら、じゃあ前回のマフィンのお礼って言えば食べてくれるかしら?」
ずずいっと差し出されるドーナツにそこまで言われたらありがたく頂かないわけにはいかない
「それじゃあいただきます」
おずおずとドーナツの袋に手を伸ばして1つ取り出すとパクリとかぶりつく口の中に甘い砂糖の味とドーナツの柔らかい感触が何故だかホッとした