第25章 無我夢中〜相澤消太〜
トボトボと病院からマンションまでの道を歩いて帰った
玄関のドアを開けて靴を脱いでリビングへと向かうとそのままソファへとボスっとダイブした
何時間そうやって動かないまま目を閉じていただろうか、静かな部屋に掛け時計の音だけが聞こえる
ゆっくりと目を開けてノロノロと自分の部屋に向かう
動きやすい格好に着替えた華は一緒に持ってきた毛布をズルズルと引きずり再びソファへ向かうと毛布にくるまって座った
マイク先生はあぁ言ったけど心配で心配でどうしようもない、命に別状はないと聞いてもベッドで眠る姿に胸が締め付けられそうだった
いつ帰ってきてもわかるようにリビングのソファで眠る事に決めた華はゆっくりと目を閉じた
だけどいくら目を閉じても眠れるはずがなくて何度も何度も寝返りを打ちながらウゴウゴと動き回っていた
朝が来ても昼を過ぎても華はソファから動けなかった
ようやく夕方過ぎてノロノロと動こうかと体を起こしたと同時に玄関からガチャガチャと鍵を開ける音がして華はバッと飛び起きるように玄関へと走った
「消太くんっ!」
「いきなり開けるな、危ないだろうが」
先に勢いよくドアを開けたのは華で、その様子に少し驚いたように包帯だらけの消太くんが立っていた
「もう病院でてきたの?大丈夫なの?」
「見た目よりは酷くない。大丈夫だ」
言いながらスタスタと中へ入る様子にミイラなのに!?と心の中で突っ込んだ
「おい、お前ここで寝てたのか?」
目線の先には抜け殻のようになっているソファへの毛布
「だ・・・だって、消太くんが帰って来たらすぐにわかるようにしたかったんだもん・・・」
ボソボソっと呟く姿に嬉しい気持ちと一緒に申し訳ない気持ちも消太は湧き出た
とても心配をさせてしまったのだろう、華の目元にはうっすらと隈が出来ている
「ちゃんと自分の部屋で寝ろ。俺も部屋で大人しくしてるから」
消太の言葉に安心したのか「絶対だよっ」などと言いながら自室に入って行く華を見て
「やっぱり自分の家が落ち着くな」とポツリと零した
それが華がいるから落ち着くのか、それとも単に居心地のいい空間なだけなのかそれは消太自身にしか分からないことだった。