第24章 すれ違い〜相澤消太〜
口にした瞬間にしまったと反射的にそう思った
だが、自分の口からはまるでレコードの様に口から溢れる
一瞬揺れた瞳が傷つけてしまったと物語っていて気持ちがぎゅっとなった
ただ、華が嬉しそうに俺のクラスの生徒に菓子を配っているのを見て
何故だか胸がざわついた
よくよく考えれば華にだって友人はいる
仲のいい友達なんて出来てくるだろう
それは別にいい、彼女には彼女なりの付き合い方があるのだから
だけど手作りを配り回っていたのにはどうも気に食わない
この間、手作りを食べるのは俺だけだと言っていたのに
どうしてか、そう言われて少し嬉しい気持ちがあったのに
今回の光景に頭に血が上って思わず華に冷たい言い方をしてしまった
逃げるように去って行ってしまったであろう廊下を見ながらも直ぐに後悔の気持ちが浮かんでいた
また、前みたいに避けられるのだろうか?
もう話してくれないのだろうか
もう笑ってくれないのだろうか
思えば思うほど顔には出ないが頭の中はグルグルとしている
お陰で午後の実技の授業に珍しく身が入らなかった
授業が終わり、職員室に戻ると帰り支度をする教師達を見ながら
帰ろうという気にはなれなかった寧ろ遅く帰りたい
その気持ちを知ってか知らずか後ろからひょっこりと声を掛けてくるやつがいた
「よぉ、イレイザー。たまには飲みにでも行かないか?」
タイミングがいいというか何というか声を掛けて来たのはマイクだった
「あぁ、そうだな たまには付き合ってやるよ」
ガタリと椅子を引きながら返事を返す消太にマイクは少し驚いたような顔をする
「珍しいなぁ、最近断られてばかりだったからダメ元だったんだけど」
「ダメ元なら聞くな。美味い酒がある所がいい」
「オッケぃオッケェェェイ、俺のオススメ飲ませてやるぜぇぇっ!」
いそいそと先に歩くマイクの後ろで消太は華にメールを送った
『飲んでくるから遅くなる』
そう送ると直ぐに返信が来た
『わかった』
絵文字も句読点もない画面の文字に更に後悔が浮かんだ
今日は酒が進みそうだ