第22章 胸の中〜相澤消太〜
自分がどうこう言える立場ではないのは分かっている
分かっているが、なんかこうザワザワする
これが長年華を見てきて可愛がってたから複雑なのか
はたまた久しぶりに見た彼女が綺麗に成長していて戸惑っている感情なのか
今の消太にはよくわからなかった
「ご馳走さまでした。美味かった」
「お粗末さまでした。お茶飲む〜?コーヒーがいいかな?」
カチャカチャと食器を流し台に持って行きながらそう聞いてくるので「コーヒー」とだけ呟いた
「弁当も美味かった、丁度良い量だった」
「ホント?良かったぁ、両親以外の誰かに作るの初めてだったから心配だったんだ」
消太の言葉に嬉しそうに声を弾ませるとコーヒーを消太の前に置いた
「そうなのか?緑谷とかには作ってやらなかったのか?」
「う〜ん、作ろうとは思わなかったしなぁ、本当に消太くんが初めて」
「・・・そうか。あぁ、飲んだ後は片付けるから」
自分が初めてだという言葉に何故だか頬が緩んでしまった。それを華に悟られない様に部屋に戻れと言わんばかりにシッシッと手を払う
「そう?じゃあ、お休みなさい」
「あぁ、お休み」
名残惜しそうな表情を見せながらも大人しく部屋へと戻る華に小さくため息をついた
結局のところ今の今まで突然よそよそしい態度になったのは何が原因だったのだろうか
こうやって顔を合わせる様になってからはそんな素振りは一切見せない
むしろ機嫌がいいのか常にニコニコとしている
よそよそしい期間がまるでなかったかのように
彼女の笑った顔は昔から好きだった
家に遊びに行くと嬉しそうに笑う姿が好きだった
消太は残ったコーヒーを飲み干し、流し台で軽く洗って自分の部屋へと足を向ける
明日も彼女の笑顔が見れるのは正直嬉しい
これが消太にとってどんな感情なのか分かるのはもう少し先の事