第22章 胸の中〜相澤消太〜
夕方、学校が終わって家に帰ると見上げた自分の部屋から明かりがついているのが見える
自分の部屋に明かりがついているのは何だか変な感じがする
これからはこの光景が当たり前になっていくのだろうかと思いながら消太は部屋の鍵を開けてドアを開けた
ふんわりと味噌汁の香りがする
家の中でこんな香りがするのはいつ振りだろうか
「ただいま」
「あっ、お帰りなさい。今日は早かったんだね」
言いながらくるりと顔を向けて華が笑った
「お前が飯作ってるのか?」
「あぁ、うん。家ではママと作ってたし、何もしないで置いて貰うのも悪いし。凝ったものは作れないけど」
「そんな気を使わなくていい、お前のしたい事をしとけ」
「気なんて使ってないし、ただ一緒にご飯食べたくて作っただけ」
言いながら出来上がったカツ丼をテーブルへと置く
「じゃーん、今日は特製カツ丼ですっお熱いうちに召し上がれ」
ほこほこと湯気を立てているカツ丼は美味しそうだ
というか何故、カツ丼なんだ?疑問に思いながらも箸を手に取り口に入れる
「・・・・美味い」
「ほんと?良かった。今日、出久くんと話してて凄く食べたくなっちゃって」
「・・・そういや、お前 緑谷と仲がいいんだよな?俺たちのことは話したのか?」
「出久くん?まぁ昔からの幼なじみだから仲は良いよね。あっ!でも同居のことは言ってないよ?」
お味噌汁を飲む手を止めながら慌てる様に言う華に消太は「別にお前がペラペラ喋る様な奴じゃないって分かってる」
そう言うと華はほっとした様な顔をした
「そうだ、今日はたまたま早く帰れたけど、遅くなる時があるから遠慮しないで寝とけ」
箸を動かしながら華にそう告げると味噌汁に口を付けた
「分かった。その代わり早く帰れた時には一緒にご飯食べて」
遅くなる時はメールしてね?と念を押される様に言われて消太は二つ返事で頷いた
昔から誰かが側にいないと落ち着かないのは健在な様だ
これであの両親がいない間に1人で暮らすなんていうんだから無理な話だ
極端な話、寂しくてあの緑谷が華の家に入り浸る様になったら何となく気に食わない