• テキストサイズ

ひとつの円の裏表(裏道夢)

第6章 欲しがれ、獣


「で、結局どうなったんですか」
「入籍しますというか、もうしたから私の苗字が表田にクラスチェンジしました、よろしく」

10年ずるずる引きずっておいてなんでそうスピード展開になるんですか、と熊谷くんは呆れた顔で日本酒を煽った。いつもよりペースが早いそれを私は苦笑いで見届ける。
兎原くんはあんな根暗マッチョの何がいいんですか、と口走ったので裏道くんと一緒に店の外に出ている。南無三。

「いや〜〜〜〜おめでたいですね〜〜〜〜」
「木角くんそのキャラキモイからやめて」
「あ、そう」

なんで木角さんもいるの、と聞かれた裏道くんには素直にセフレでした、と紹介した。木角くんは別に悪くないしそもそも10年恋人いない間おもちゃが恋人でしたとかそんな訳ないから現実見て、と言うとへこんでたので問題ないだろう。
実際裏道くんの方も聞いてはないけど引き下がりようからして右手だけが恋人ではなかったようだ。
木角くんは私の歳を知らなかったので裏道くんと同い年なのを知って驚かれてしまった。悪かったな童顔気味で。

「だったら俺でもいいじゃないですか」
「尊敬する先輩に恋する女に手を出す度胸はどこから来るの」
「俺にとって早苗先輩は俺の好きな女であって裏道さんの女じゃないんで」
「やだ、男前……乗り換えようかな……みつ夫くん……」
「早苗さん……」

私が熊谷くんの方に身を乗り出し、熊谷くんが私の手を握った瞬間に個室の襖が開く。にこにこ笑顔の裏道くんが後ろ手に持っていた兎原くんらしきものを投げ捨てる。
俊敏な動きで靴を脱いで座敷に上がった裏道くんは熊谷くんの手を払い落とした。

「聞こえてるよ〜☆やめてね〜☆」
「油断したらいつでも貰うつもりでいますから」
「うわ、顔怖…」

上から裏道くん、熊谷くん、私だ。木角くんはスマホを弄りながらタバコを吸って我関せずだ。あまり長いこと拘束するのも悪いので先帰る?と尋ねるとそうすると言って熊谷くんと裏道くんの冷戦の合間を縫ってお先でーすと言いながら座敷をでる。
外までは邪魔だからいい、と言ってくれたので座敷の内側から座ったまま別れることになった。木角くんは襖を閉める間際によかったな、と囁いてくれた。
ありがとね、と返した私の声は届いただろうか。


「早苗、ほらお開きにするぞ」

そう言われる頃には夜も随分とふけていた。
/ 19ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp