第8章 芸術家たちの島
「ちょっと、あまりにも無防備すぎない?」
そう、背後から聞こえた声は聞き慣れたもので、私は笑顔で振り向いた。
『リノス!?』
それは私の愛しい弟だった。
だけれど、どうしてここにいるんだろう。
「もしも、護衛につく海軍将校が僕じゃなかったら、今頃姉さんは捕らえられていたよ?」
そう言いながらもニコリと笑って私の前の椅子に座る。
「アルテ島から僕に手紙が来た、ぜひとも護衛をして欲しいとね。まあ急なことで少し疑問があったけど、その要請を受けたら姉さんが乗ってくるからビックリしたよ。」
そういった後に「無事でよかった。」と安心したような表情で私に告げる。
『リノスも元気そうで良かった。随分背が伸びたみたいね。』
リノスは見たところ2年前に会った時より優に20センチは背が伸びたようだし、顔立ちも大人びてきた。
だけど、姉である私にとっては変わらず可愛い弟のままだ。
「ねぇ、もしかしてクレアって画家は姉さんのこと?」
『ええ、そうよ。』
「やっぱり・・・前に雑誌に載ってるのを見てもしかしたらそうなんじゃないかって思っていたんだ。」
さすが弟だ、絵を見て私のものだとわかるなんて。
昔とは随分画風が変わったと思っていたんだけれどな。
『海軍が海賊を見逃してもいいの?』
「今日の僕の仕事は商船の護衛だからね。それに、今の姉さんは海賊じゃなくてアルテ島の画家のクレアでしょ?」
『まぁ・・・そうね。』
見逃してくれるというなら、それに越したことはない。
私は無事シャボンディ諸島について、みんなと合流しなきゃいけないのだが。
「こんなこと知られたら、僕だってタダでは済まないけれどね。中佐から三等兵まで真っ逆さまに降格だ。」
そういえばそんなやつが居たような・・・とリノスは考えたが誰なのか思い出せないので考えることをやめた。
『リノス、海軍中佐まで昇格したのね!』
私はリノスが今、中佐であるという事実に喜びの声をあげた。
だって、私の弟がどんどん昇進している!これって凄いことじゃない?
「マリンフォードでの功績やその後の仕事ぶりが評価されたんだ。あのめんどくさがりのティリ先輩なんて准将まで昇進したよ。」
あぁ、あの人か、とかつての少年・・・もとい青年を思い出しながらも准将としてバリバリ働いてる姿は思い描けなかった。