第8章 芸術家たちの島
一体なぜ自分が青空を目にしているのか、すぐには理解出来なかった。だが、自分が空を飛んで移動していることは明らかだ。
先ほどあったことを頭の中で整理してみる。
みんなで大将やくまたちから逃げていたワケだが、本物のくまが出て来て彼の手に触れて、そして気がついたら空を飛んでいると・・・うん、全くわからん!
『みんなは大丈夫かな・・・。』
他のみんなの状況が少しもわからない。
やられてないか、心配になって、その考えを振り払っての繰り返し。きっとみんななら大丈夫だって、そう思わないと苦しくて仕方ない。
どこまで行くんだろう、そもそも一体ここはどこ?
どの海なのかすらわからない。
ぐるぐると色々なことを考えらながら時間が経過していく。
きっとこのまま変な場所に飛ばされて死ぬんだ、と考えて泣き出しそうになった頃、体がぐんっと下に引っ張られた。
『ぷぎゃッ!』
情けない声を出しながら、べしゃりと地面に落ちた。
あの高さから落ちたというのに、すんでで一度止まったことで衝撃は少なかった。
「お、女の子が空から落ちて来たぞ!」
「大丈夫かい!?」
パッと顔をあげると、そこは民家が立ち並ぶ村の中だった。
家の扉から顔を覗かせるもの、心配そうに駆け寄るもの、物珍しそうに見つめるもの。
何よりも謎だったのは、この状況で楽しそうにスケッチをしたりキャンパスをわざわざ持って来て絵を描き始める人がいたことだ。
「地面に肉球の跡なんて描かずにいられんなぁ。」
そう呟く人の声が聞こえて、私は立ち上がり自分のいた場所を見ると確かに肉球の跡があった。
これは、くまの悪魔の実の能力?
彼は果たして私たちを殺してしまいたかったのか、それとも救ってくれたの?
いや、どっちだっていい。
すぐにあの島へ戻らなくちゃ。
私は波の音を聞いて振り返ると、海が広がっているのが見えた。
よかった、海は目の前にある。
創造で小舟を造って、それでシャボンディ諸島に向かおう。
私はそう思いながら歩き出すが、すぐによろけてドサリと地面に倒れ込んだ。
行かなきゃいけないのに、こんなところで倒れてる暇なんてないのに、身体に力が入らない。
次第に視界が暗くなり、私は意識を手放した。