第6章 海の上での賑やかな日々
スリラーバークを出航した夜、私は医務室で寝ていた。
まだ身体が動かないが、朝に比べると随分と楽に感じる。
チョッパーは凄い、少し動かしただけでも痛かった身体が1日でここまで良くなるなんて・・・。
ただ一つ、困ったことがあるとするならば全く眠気が来ないことだ。それに加えて動いて気分転換も出来ない。
詰んでいるとしか言えない状況である。
ガチャリ、と扉が開いて緑色が見える。
『ゾロ。』
「なんだ、まだ起きてたのか。』
『寝られなくて・・・ゾロはどうしたの?』
ゾロは一直線に包帯のあるところへ向かう。
「トレーニングで邪魔だから包帯を取っちまったんで、チョッパーに怒られる前に包帯を巻いとこうと思ってな。」
ゾロは包帯を持って近くの椅子に座り、服を脱いで上半身裸になる。傷だらけの身体が目に入り、私は眉を潜めた。
痛々しい。
ゾロは真剣に包帯を巻くが、上手く巻けないようで汚い。
これは・・・明日絶対にチョッパーにバレるな。
「まぁ、こんなもんでいいか。」
ゾロはそう言って服を着る。
あぁ、やり直してあげたいけど私には無理だ。
「・・・気分転換でもするか?」
私の望むことを提案してくれる、とてもありがたい。
『うん!』
私が答えると、ゾロは私を両腕で抱きかかえる。
お姫様抱っこというやつだ。
『ちょ、待って、肩貸してくれれば頑張って歩くよ!』
「身体まだ痛ェんだろ、無理すんな。」
ゾロは特に何も感じることなく飄々と私を運んでいくが、私は恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じる。
暴れて降りたいくらいだけれど身体が痛いので、為す術なくゾロに運ばれていく。
甲板に出ると、波の音が聞こえた。
それ以外は何も聞こえないし、波も荒くないから静かに波打っているだけで、静かな夜だと言える。
上を見上げると綺麗な星空。
私はこんな夜をとても気持ちがいいと感じる。
『私、夜の海って好き。心が落ち着くもの。』
「そりゃ良かった。」
ゾロが私を甲板の端に降ろす。
私はもたれかかりながら、明かりのない海を見つめた。
だけど、たまにこうして暗い海を見ているとあの頃を思い出す。
部屋に閉じ込められて、小窓から暗い海を見つめた過去。
「明日も明後日も、気分転換に付き合ってやるよ。」
「・・・ありがとう、ゾロ。」
その言葉に、心が晴れた気がした。