貴方と紡ぐ物語 【アイドリッシュセブン】【R18】
第3章 誘う華、誘われる蝶 【八乙女楽】
「行ってきます」
『いってらっしゃーい』
チュッ
「ただいま」
『おかえり』
チュッ
「おやすみ」
『おやすみ』
チュッ
「すー…すー…」
『……………。』
…………。
…いやいやおかしい。
いってきますの時もおかえりの時も、おやすみの時もキスをした。
…その先は?
普通、
「いってきます」
『いってらっしゃーい…んんっ』
『んっ…ふっ…んあっ…はぁっ…楽…仕事遅れるよ?』
「琴音が可愛いのが悪い。…今日仕事午後からなんだよ、それまでジムに行こうと思ってたけど、やっぱ辞めた…今からお前を抱くわ」
『えっ、今午前中、てゆーか朝だから、んんっ』
「良いだろ?俺がお前を可愛がりたいんだ…抱かせろよ」
『やぁっ、んんっ…』
くらいの事があっても良いんじゃないの?
いや、それは無いとしても、同棲して半年の彼女に夜触れないとかある?
…しかも2週間。
確かに最近の楽はいつにも増して忙しい。
帰って即寝、みたいな日もあった。
でも、2週間だよ?
前の楽は、最低でも3日に一度は私に触れていた。
……もしや、私に飽きた?私に魅力が無くなった?
どーしよう。
楽ほどの色男なら、私を捨てて別の女に乗り換えるのは簡単な事だろう。
私より綺麗で可愛くて性格の良い子はいる。
特に楽の周りには。
絶望的な考えが頭に次々浮かぶ。
…でも。
ただ忙し過ぎるだけかも知れない、とか
何かしらの理由があって禁欲中なのかも知れない、とか
そういう希望的な考えも同じくらい頭に浮かんで来て。
『…よし』
全てにケリをつけるため、私はとある作戦を決行する事にした。
…これで楽が私をどう思っているか分かる。
そう考えると、少しだけ、怖い気持ちが湧いてきてしまって。
その夜はあまり眠れなかった。