第7章 《リヴァイ》愛ある行為を ※
結局今日も終電になってしまった。
このところ毎日こんな調子だ。
決算期に入ったこの時期になると毎年残業のオンパレードで、当たり前のように休日出勤。特に俺の部署は酷い。
だが、今日はいつもより家路に向かう足取りが軽かった。
明日は久しぶりにまともな休みなのだ。
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キーを回しドアを開ける。
ドゴッ
無意識に足が急いでいたようで、何かを軽く蹴飛ばした。それは小さな小包だった。
ラベルを見るとエマ宛の荷物だ。
俺はそれを小脇に抱えて部屋へ入った。
灯りが煌々とついたままの部屋。
ダイニングテーブルに目をやると、ランチョンマットの上に一人分の食事の皿が綺麗に並べてある。
そしてその向かいの席には、テーブルに突っ伏した状態で寝息を立ているエマの姿があった。
恋人のエマとは同棲を始めてもうすぐ一年だ。
二人とも社会人で別の会社に勤めているがエマのところは残業は少ないらしく、大抵自分よりも先に帰ってこうして晩飯を作ってくれている。
早く帰れる日はもちろん一緒に食べるが、今日みたく遅い日はエマは先に食べて、俺が帰ってきたら向かいの席に座って今日あったたわいもない話などをしながら飯に付き合ってくれる。
俺からしたら嬉しいことだが、エマにはあまり無理はさせたくないところでもある。
だから遅くなる日は適当に食べるからと言うのだが、エマは何故かそこは頑固で、何度言ってもきかなかった。
眠いなら先に寝てくれればいいものを…風邪引くじゃねぇか。
静かに眠るエマを起こさぬようベッドへ運ぼうと手を伸ばしたその時。
「…たくさん…たべてくださいね…」
突っ伏したままのエマが急に喋りだして触れようとした手を止めた。
「起きたのか?」
「…………」
返事はない。寝言か?
「ん……リヴァイさん…おつかれさまです…」
くるりと顔が横を向きエマの寝顔と目が合う。
思わず頬が緩んでしまった。
無防備で少女のような寝顔…このまま眺めていてもいいだろうか。