第1章 《リヴァイ》浴衣と花火とりんご飴と※
どうやら俺がいきなりキスした時に手から滑り落ちたらしい。
舐めかけで半分溶けた飴の表面に、芝生がコーティングされてしまい、これはどう見てももう食べられない状態だ。
「飴なんてまた帰りに買ってやるよ。」
「もう!そういう問題じゃないですってばぁ!」
「そう怒るなよ、悪かった。」
膨れっ面をしたエマの頭をポンポンと撫でて謝罪すると、エマは今度は怒りは纏っていない静かな口調で発言した。
「もう………こういうことは帰ってからにしてください。」
その言葉を聞いてエマの顔を覗き込めば、暗闇でも分かるくらいに彼女は赤面していた。
同時に花火が上がり出す。
夜空に花火が弾ける瞬間だけ辺りはその明りに照らされ、周りの景色や人々の輪郭がはっきり見える。
もう一度エマを見やると、花火が弾けた瞬間に耳まで真っ赤に染め上がった顔がはっきりと浮かび上がった。
俺は夜空に咲く大輪の花よりも、目の前にいる小さくか弱い可憐な花を今すぐ全身で愛でたくて仕方なくなってしまった。
fin.