第4章 《エルヴィン》堕ちる ※
「いやっ!」
「そんなに怖がらないで。」
何度も声を上げてもがくが、自分の力ではビクともしない。
男の手が顎に添えられ上を向かされて、強制的に視線を合わせられてしまう。
口端を吊り上げる男に全身から血の気が引いていくのが分かった。
だれか助けて!!
「やっ!いやだ!離して!離してぇ!」
男の大きな手がうっとりとエマの髪を撫で続けている。
その気色悪さに身震いが止まらない。
「やめて!犯罪者!警察呼ぶわよ!」
「ハハッ、それは勘弁して欲しいな。私は純粋に君のことが好きで一緒にいたいだけなんだ。
しかし…この体勢では暴れるのを押さえつけるのに手一杯で先に進めないな。」
男は困ったように笑いながら、素早い動作でエマをソファに組み敷いた。
「やだっ!いやぁっいやぁ!」
「大丈夫だ、すぐに良くなる。」
「やめて!この変質者!触るなっ!」
ばたつかせようとした手は頭の上でひとまとめにされて、足は上から男の体重がのしかかり、体を使って抵抗することが出来なくなった。
「さっきから犯罪者やら変質者やらひどい言われようで傷つくな。一応私にもエルヴィンという名前があるんだ、これからはそう呼んでくれると嬉しいんだが。」
「くっ…離しっんん!!」
こんな奴に屈してたまるかと、体の自由を奪われてもなお声を上げようとしたがその口も塞がれてしまう。
分厚い唇がエマの小さな唇に覆い被さり、唇ごと食べられてしまうかのように乱暴に吸い付かれる。
必死に身を捩って抵抗してみせるがそれも虚しく、無遠慮に唇を割って入り込んできた舌はエマの口内を少しずつ蝕んでいくのだった。
「んぅ!んっ!んんん……!」
声を出そうとしても口の中でくぐもった音が漏れるだけで、呼吸が乱れて余計に苦しくなっていく。
気持ち悪い、やめて、離して!
そんな中でもエルヴィンの舌は口内をくまなく調べあげるかのようにゆっくりと、ねちっこく這い回り続けるのだった。