第12章 《エルヴィン・リヴァイ》 “アイシテル” ※
「酷いことをされたね…辛くないか?」
エルヴィンは優しく甘い声で問うた。顔には詐欺師のような笑みを貼り付けて。
「エルヴィン、さん…」
エマの表情からはいつの間にか怯えが消えている。
本当に人間というのは〝単純〟だ。
そう思った瞬間、エルヴィンはゾクゾクした。自分の手で一人の人間を絆し、飼い慣らすことの幸福を全身で感じている。
こんなこと何百年と生きてきて初めての感覚だ。
両手でゆっくり輪郭をなぞり、顎までくると上を向かせた。零れそうに真ん丸な瞳が見上げている。
今、君に私はどう映っているだろうか?
優しい恋人?
それとも、恐ろしい悪魔?
エルヴィンはエマにキスをした。身体はもちろん口腔内の力も抜けきっている。
舌を挿入し、労わるように時間をかけて愛撫した。
挿れたすぐはほのかにリヴァイの体液の味がしたが、それもそのうち二人の唾液に掻き消えた。
「ん、ふぅん、は、ぁ…っん」
「甘くて美味そうな声だ…その声すら、食べてしまいたいよ」
エルヴィンを見つめるエマはトロンと目尻を下げている。
もう怯えだとか恐怖だとかいう色は全くない。
「エマ?私が、怖いか?」
先に投げかけた質問をまた。
するとエマはだらしのない顔を向けたまま、今度ははっきりと首を横に振った。
口角が自然と吊り上がってしまうのを止めない自分は、一体どんな顔をしているのだろうか。
色々な体液でぐしゃぐしゃにヨレたキャミソールを脱がし、裸のエマの背を支えながらベッドへ倒した。
ずっしりした体躯でその上を覆い、見下ろす。
「…こ、ろ…さない…?」
絞り出すように紡がれた言葉に、エルヴィンは見開かれた丸い目を、細めた。
「何をいまさら…一度だって君を殺そうとしたことがあったか?」
「だっ、て……血を吸う、から…んんっ!」
エルヴィンは乳首に舌を這わせた。手は下へ伸び、愛液をクリトリスへ撫でつける。
「ここ…かまいすぎてコリコリになってる。皮も剥けてしまって」
「あっぁあ、やっ、あぁ!」
「殺すわけないじゃないか…こんなに愛おしい君を、なぜ殺さなければならない?」
「あっ!ふぁ、そこでしゃべっな、んっぁあ゛!」
濡れそぼった乳首にわざと吐息を被せるように喋ると、ピクピクと可愛く反応する。