第11章 《エルヴィン》黒の彼氏 ※
「あー!二人のおかげでほんっとスッキリした!今日はありがとね!」
「良かった良かった!あたしはエマの笑顔が見れて安心したよ!」
「散々泣いて愚痴らせてもらったら吹っ切れました!浮気男なんてクソ喰らえー!!」
「ハハ!その意気だよ!次行こう次ー!」
その日、私は夜の繁華街を歩いていた。
仲のいい大学の友人と三人で肩を並べ、アルコールが程よく回り気分も上々で、数日前に別れた元彼の愚痴を撒き散らしながら駅へと向かう。
ふと、駅前の広場でたむろしている若者やサラリーマンに混じって一際目立つ金髪の男が目に止まった。
「ねぇ…かっこいい…」
「え?」「は?」
私は友人の肩を掴みながら視線はその男に釘付けだった。
周りの男達より頭一つ分ほど抜きん出た身長は180はゆうに超えているだろう。美しいブロンドの髪はきちっと纏められ、精悍な顔立ちはイケメン以外の何物でもない。
そう思ったら何故かいてもたってもいられなくなった。
「これ、今行かなくていつ行くってやつでしょ」
「は!?え、ちょっと待ってよ!」
私は友人の制止も振り切り、彼に向かって一直線だった。
「あのすみません!」
「……私、ですか?」
「はい、あなたです!」
彼は澄んだ碧眼だけを動かした。
スーツ姿で広場の一角にあるモニュメントに背を預け腕を組んでいる。
その出で立ちを目の当たりにしただけで私は頭がクラリとした。
完全に一目惚れだった。友人達の冷ややかな視線など気にもせず。
ここまでの行動力を発揮できたのは酒のせいかもしれない。いや酒のせいでいい。むしろ感謝だ。
数日前まで恋人がいたことなんて嘘のように、私は彼に名を名乗り、お近付きになりたいと連絡先を聞いてしまったのだった。