第8章 《エルヴィン》堕ちる2 ※
「…一緒に…………いたい、です」
「………」
エルヴィンを好きになったからそう思うのか?
そんなことはもうエマには分からなかったし、どうでもよかった。
ただ、身体も心もエルヴィンと離れたくないと叫んでいる。
分かるのはそれだけ。
「っうっ…うぅっ……」
言葉と共に溢れた大量の涙が次々と太腿に落ちた。
「エマ」
濡れた頬に触れる両手。
優しく包み込まれてゆっくり顔が上がり、待っていた唇が静かに重なった。
「んっ、ふぅ…ん」
入り込んだ舌が温かくて柔らかくて、また涙が出る。
この温もりを失いたくないとまた思ってしまった。
「ありがとう、エマ。君からそんな言葉を聞けるなんて嬉しくてどうにかなってしまいそうだ。」
「……っ、…私、好きなのか分からない。でも離れたくない…声が聞けなくなるのも、触って貰えなくなるのも、辛くて……耐えられない…」
「それならずっと一緒にいよう。君が辛くならないようにずっと傍にいる。」
「ぅっ、あぁ……っ!!」
エマはついに声を上げて泣き出した。
気狂いした男に堕ちてしまった自分が許せないのか?
エルヴィンを知らなかった頃の自分に戻れなくなって絶望しているのか?
それとも
エルヴィンと一緒にいられるのが嬉しいのか?
温かな胸に抱かれているのが幸せなのか…?
思考回路は崩壊してしまった。
だけど、己の全てがエルヴィンを欲していることだけは確か。
そしてエマは、もうそれに抗うこともしない。
「エマ……愛してる。」
愛おしそうに愛を囁くエルヴィンの胸の中で、流れる涙を止めようともせず、ただただ泣いていた。
fin.