第8章 《エルヴィン》堕ちる2 ※
段々はっきり聞こえる自身の呼吸音。
「どうかしたか?」
「っ、いえ…別に…」
「そうか。」
身体の奥でジン…と少しずつだが確かに燻り出す、熱。
髪をスルスルと滑り降りた指先が、首に当たった。
「っ、はぁっ…」
エルヴィンは瞳を細めながら、まるで壊れ物を扱うかのように丁寧に髪を梳かし続けた。
どう、して……
エルヴィンになるべく分からないように腿を擦り合わせる。
全然疼きが止まってくれない。それどころか、
「エマ…愛してる。」
「ゃっ…」
耳元で囁かれただけでビクリと身体が跳ねてしまう。
「ぁ…はぁっ……ぅ、」
こんなのおかしい…
何もされてないのに、どうしてこんな…
胸が切なく締め付けられる。
はぁはぁと呼吸がうるさい。
苦しい…苦しくてたまらない。
だめだ、このままではエルヴィンに気付かれてしまう…
でも、
気付いて欲しい。
「どうしたんだ、苦しそうだ…」
「はっ、はぁっ…ん…はぁっ、」
「息を荒くして…目が潤んで顔も赤い。体調悪いのか?」
髪を滑っていた手が額に当てられた。
「ぁっ!」
たったそれだけでのことで身体が揺れて更に呼吸が乱れる。
「熱はないようだな…でも頬は赤いな。部屋、暑いか?」
「……あつ、いっ…」
部屋が暑いなんて事はない。
エアコンも効いているし布団も被っていない。
それに今日も下着とシースルーのガウンしか羽織っていない。
それでも身体の芯から燃えるように熱くて、毛穴からじわりと汗が滲む感覚が分かった。
「エマ?」
「はぁっ…な、に…」
「今どういう気分だ?見ただけではよく分からないから、私に分かるように教えて欲しい。」
“でないとどうしてあげたらいいのか分からない”と言ったエルヴィンは、本当に心配しているような顔だ。
「エマ?」
体調不良なんかじゃない…
これは、これは…
「はぁ…っ、はぁっはぁっ…ぅ…」
言えない…言いたくない…言いたくないけれど…
このままじゃ苦しくて頭がおかしくなりそうだ。
もう…言ってしまいたい。